現場からみた電子カルテシステムを導入によるメリットとは?
当院でもオーダリングシステムのみの運用から、いよいよ電子カルテシステムの導入に踏み切りました。
しかしいざ導入に向けて運用の見直しをしていると、「電子カルテって本当にメリットがあるの?」と疑問に思ってしまう時があります。
そこで、現時点でイメージできる現場サイドからみたメリットというものをまとめてみたいと思います。
1.電子カルテのメリットとは?
現時点で感じる電子カルテのメリットには、次のようなものがあります。
1-1.記録を書くのが速くなる
電子カルテシステムでは、あらかじめ決めた文章の型(テンプレート)や定形文が登録でき、都度それを使うことができます。
実際にカルテを見た時には、そんなに毎回決まった文章を使っていることはなかったのですが、例えば「手術前後」や「決まった疾患の人が入院した時」などは便利になるようです。
例えば圧迫骨折の場合には、「コルセットをオーダーするか?」、「ベッドのギャッチアップは何度で指示するか?」、「リハビリの開始はいつからにするか?」、などという記録の型を登録しておけば、抜けなく簡単に記録を書くことができるのです。
また、シェーマも一緒にセットしておけば、その都度貼り付ける手間がなくなります。
その他、「Do」機能もあり、以前書いた記録と同じか大差ない場合には便利です(日々の記録に大差がないと指導される恐れがあるため、実際使うかどうかは別ですが…)。
さらに根本的な話として、手で書くよりも打つ方が早い、書いた後の修正も楽、というメリットもあります。
1-2.可読性が向上する
簡単に言うと、素人でもカルテが読みやすくなります。
医師が手でカルテに書くと、ドイツ語やら英語やらを巧みに使って書きますし、忙しい中書くので読む方にとってはとても読みづらく、解読するのに正直時間が掛かってしまいます。
私もドクターサマリーを代行で作成していたのですが、医師によっては全くと言っていいほど読めない場合があります。
でも「先生読めません」っていうのも言いずらいので、読みやすくなるのは大歓迎なのです。
1-3.カルテの保管場所がいらなくなる
基本的に「カルテ庫」と呼ばれる保管スペースが必要なくなってきます。
もちろんすぐになくせるのではありません。
カルテの保存期間は原則5年です。
つまり電子カルテを始めてから少なくとも5年はカルテ庫が必要です。
ただこれを過ぎれば、医療機関によっては減らすことができるはずです。
しかし電子カルテの導入により、カルテは無くなっても患者それぞれの「個人ファイル」は残ることになります。
他院からの情報提供書、患者やその家族からサインをもらった同意書などは、原本を紙で残さないといけないと業者から聞きました。
そのため、カルテはなくなっても個人ファイルは残る、という形になるようです。
ただしこれを踏まえても、保管用スペースが減らせるのは間違いないでしょう。
1-4.検索が簡単になる
機能の一つである「検索機能」を使えば、見たい情報がすぐに見れるようになります。
紙カルテはその物自体をまず探さなければいけませんが、電子カルテは利用できるパソコンがそばにあればすぐにカルテの内容を見られます。
そして「キーワード」を指定すれば、過去の記録から見たい所をすぐに絞り込むことができます。
特に、紙カルテを探すのって何気に時間が掛かって困ります。
本当はいけないことなのですが、カルテがどこにあるか分からなくなる時があるのです。
使用頻度が高い部署が使っていたのならば見つけやすいのですが、いつも使っていない部署が突発的に使ったりするとどこにいったか分からない、ということが多々あるので、このメリットはとても嬉しいです。
1-5.紙が削減できる
今まで紙だった運用を電子データにするのですから、当然紙は減る…。
と思いたい所ですが、思ったよりも減らせないかもしれません。
というのも、「運用方法を変えるリスク」や(3)で述べたような紙での保管が必要なものなどを考えると、意外と紙が残る印象です。
例えば「申し送りは画面だけでできるのか?」、「医師の指示が出た場合に画面だけで病棟は気付けて次の人に伝えられるのか?」、などが不安要素としてあるのです。
当院では、「スタートはあまり変えず、徐々に減らしていこう」ということにしています。
1-6.その他
その他、電子カルテシステムとオーダリングシステムを同時に導入する場合には、「指示伝票がいらなくなる」、「会計の時間が短縮できる」、などのメリットが追加されます。
オーダリングシステムのメリットについては、当サイト内の記事をご覧ください。
2.まとめ
以上、これらが電子カルテ導入のメリットと考えられます。
その他まだあるかもしれませんので、気づいた都度追加していこうと思っています。
まとめとして個人の意見を言うと、どれも効果を金額に直せば「それなりのメリットはある」と出るのかな?という印象です。
当院の会議などでそこまで求められていないので細かい計算はしませんが、前述した(1)~(6)のメリットは、それぞれ次のように費用削減効果を計算できるかと思います。
(1)医師や看護師、療法士などの入力短縮時間×時給
(2)サマリ代行作成短縮時間×時給
(3)削減できる保管スペースの地価(この算出方法には異論があるかもしれませんが…)
(4)紙カルテの捜索に掛かっていた時間×時給
(5)削減できた紙の枚数×単価
(6)その他オーダリングシステムも一緒に導入した場合には、その効果をプラス
いざ計算しようとするととても大変ですが、それなりの金額になりそうではないでしょうか?