オーダリングシステムを導入したことによる現場的なメリット
オーダリングシステムってどんなメリットがあるの?
本当に役に立つの?
システム導入といっても、漠然とした不安がぬぐえませんよね。
そこでここでは、オーダリングシステムを導入した経験から、オーダリングシステムのメリットを紹介します。
1.オーダリングシステムとは?
まずは簡単に、オーダリングシステムとは?からです。
オーダリングシステムとは、医師の検査・投薬・注射などの指示を関係部署へデータで伝達し、医事会計システムへもコストデータを送信する仕組みのことです。
そしてこれにより、診療から医事会計にかかわる処理・業務を迅速化することができます。
2.オーダリングシステムのメリットは?
ではさっそく、オーダリングシステムのメリットを8つ見てみましょう。
2-1.医師の指示出しが楽になった
当然ですが、オーダリングシステムが入るまで指示箋は全部手書きでした。
入院時の検体検査や食事、レントゲンの指示。
また、処方箋ももちろんそうです。
これらを基本全部医師が書かなければならない、となると医師はとても大変なんですね。
例えば、慢性疾患等で処方の内容が毎回変わらない場合。
手書きだと薬剤名(ミリ数)や錠数、服用方法や処方日数などを処方するたび、前と同じように書かなければなりませんが、システムを入れると「Do」という操作をしただけでOKになります。
また、特定の疾患に対してはあらかじめ作っておいた「セット」を使うことができ、特に多量にオーダを出す「入院時」には非常に便利です。
「脳梗塞用」や「圧迫骨折用」等のセットを使うことで、検査やレントゲン、処方や注射のオーダの基本パターンを簡単に出すことができるのです。
人間、繰り返しの作業は好みませんから、ちょっとでも電子カルテやオーダリングシステムを使ったことのある医師は、紙運用だとよけい面倒だと感じると思います。
そういう面では、医師は負担が減ったのかな?と感じます(医師ではない私の印象ですが…)。
2-2.指示の見間違いが減った
これは、医療機関あるあるだと思います。
医師の字は本当に特徴的です。
まあ読めない!!
私も何人かのドクターサマリーを代行で作成しましたが、一人一人に癖があり、かつ専門用語のオンパレードなので推測も困難。
「頭がいい人は字もきれい」なんて思いこんでいたことが、完全に否定されました。
特に看護師などは、医師の書いたものを見て動くことが多いと思います。
その時に「これは多分こう書いたんだろう」なんて推測して注射した結果、投与量が違った、なんてことがあったら目も当てられません。
読みやすくなるということは、医療安全の向上につながりますね。
2-3.病状やアレルギーなどに伴うリスクが減った
これも、医療情報をデータ化したことによって得られるメリットです。
紙運用では人の目でチェックしていたことを、システムが代わりに行ってくれます。
これにより抜けなくヒューマンエラーもなくチェックを行うことが可能です。
「ヒューマンエラーは決してなくならない」という前提では、自動化がリスクを回避するための一つの有効な方法です。
運用を始めると逆に気付きにくいですが、これも大きなメリットになります。
2-4.書類の作成が楽になり、データの検索時間も減った
システム的には「オーダリング(指示)」と言っても様々な機能を持っています。
例えば便利なものとして、当院のシステムには患者IDに紐づけて文書が作成できる機能があります。
これは「診療情報提供書」、「手術記録」、「診断書」、「リハビリ実施計画書」、「退院時要約(サマリ)」など、文書の基本パターンをあらかじめ登録しておき、随時書類を作成する際には残りの足りない部分を入力する、という形で書類の作成が楽になる機能です。
また、IDに紐づけられているので、患者氏名や生年月日、入院や退院の年月日などのデータを自動で文書に差し込むことができ、検索をする際にも楽です。
これによって、検索や作り直しといったことに充てていた時間が短縮できます。
2-5.データの取りまとめが楽になった
これはシステムによると思いますが、当院のそれは入院患者のデータなどを、一部ですがCSVで吐き出すことができます。
後はエクセルVBAで加工してあげれば、患者の名前や入院日時などを一人一人手打ちしなくても簡単に日誌等に取りまとめることができるのです。
ただし、システムに入力したデータ全てを吐き出させることはできません。
当院では手術や検査の実績など、データとしては入っているのに吐き出せないという状況です。
使う側的には全部吐き出せると楽なんですけどね。
2-6.指示箋の紛失がなくなった
これはしょっちゅうあることではないのですが、人間がやる以上は必ず起こります。
指示箋が紙の時、当院では医療クラーク(事務)が伝票を各部署へ運んでいました。
それがデータで飛ぶようになる訳ですから、「指示箋を紛失した」ということは当然なくなります。
その結果、「注射の指示が出ていたのに、指示箋がこなくてやっていなかった」、「検査をしなければならなかったのに、指示箋がこなくてやっていなかった」、「検査をしていたのに、カルテに指示箋がなくてコストをとっていなかった」などという事態を防ぐことができます。
2-7.カルテを探さなくても簡単に患者情報を参照できる
「あの患者さんの病名は何だったかな?」とか、「入院日や退院日っていつだったっけ?」など、なんだかんだいって結構患者情報を参照したい時って多いです。
そんな時紙運用であれば、都度カルテを探さなければなりません。
しかしオーダリングシステムがあれば、カルテ記載の部分の参照は別ですが、基本情報から入退院情報、各種オーダ情報などを簡単に参照することができます。
これが関係者全員に対してあるメリットですから、浮いた費用を金額換算すると、実は結構な額になるのかもしれません。
2-8.職員のパソコン操作のレベルが上がった
これは後に電子カルテの導入、ということを見据えていた場合に特に有効かと思います。
当院のある人は、文字を打つのもままなりませんでした。
一度教える機会も設けましたが、結局スムーズにできないままうやむやに…
システムが入って心配だったのが、この様な人が辞めていかないか?(特に看護師は辞められると困ります…)ということだったのですが、意外と新しい環境に対応してくれました。
やるしかない、という状況がそうさせたのではないでしょうか。
電子カルテの導入や、その後の地域連携を考えると、慣れるためには導入は有りかと思います。
3.まとめ
以上、思いついた限りを挙げてみました。
挙げてみると意外と結構ありました。
1.医師の指示出しが楽になった
2.指示の見間違いがなくなった
3.病状やアレルギーなどに伴う禁忌薬品のチェックが行え、リスクが減った
4.手書きが減り、データを探すことがなくなった
5.データの取りまとめが楽になった
6.指示箋の紛失がなくなった
7.カルテを探さなくても簡単に患者情報を参照できる
8.職員のパソコン操作レベルが上がった
費用対効果的にプラスになるのは1、4、5、6、7ですか…
潜在的には2や3もリスク分散として入るかなと。
8は今後を見据えた場合にスムーズに移行できるように、という面でのメリットです。
次回はオーダリングシステム導入によるデメリットについて書き、その後差引入れる必要があるのか?という点を考えていきたいと思います。
なお、電子カルテ導入のメリット・デメリットは別にまとめています。興味のある方は、下のリンクを利用してください。